会報05-4 藤棚作りの記・その2

大塚 伊四郎 [平成16年(2004)06月30日発行会報第5号から]

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2004年3月 藤棚の上棟

3月11日からの藤棚準備作業は、丸太の皮 むきから始まりました。鎌でおそるおそる薄く 削り始めましたが、相当に樹皮が厚く、徐々に 大胆に削るようになりました。材の両端を切っ て長さを揃えました。根元の方は太いうえに硬 く、鋸を動かすにもかなりの力が必要で、木が 切れる前に息が切れました。

次いで棟梁の手で丸太に墨打ちがなされ、そ れに従って我々は電動ドリル・ノミ・金槌でホ ゾ穴を掘りました。しかし、“右甚五郎”の悲 しさで、予想外にホゾ穴が曲がるうえ、腕・肩・ 腰が悲鳴をあげました。でも、「このような珍 しい体験は二度となかろう」という思いで、一同は頑張りました。

藤棚を支える四本の柱用に、深さが 90cm の 穴を掘りました。深さと水平度を慎重に確認し ながら穴底に「よいとまけ」を施しました。幾 度も微調整のため、穴に土を入れたり、逆に取 り出したり、これもかなりの苦行でした。穴底 には石盤が必要とのことで、コンクリート塊を 拾い集め、タガネとハンマーで砕きました。“穴 太(あのう)の石工”ならぬ多摩美のセメント 割りは「割れて砕けて裂けて散るなり」で、細 か過ぎてやり直しのご下命となりました。

重い吊鐘に耐える鐘楼の柱は、中心に向かって傾斜する“四方転び”の技法が使われている そうです。この藤棚の柱もその“四方転び”にするべく、穴に微妙な傾斜をとのご下命に、 我々は七転八倒しました。結果として、完成した藤棚の柱を、皆さんはどうご覧になりますか?