木村信夫 [平成19年(2007)6月30日発行会報第17号から]
★「市民健康の森」にふえてきました!
多摩美みどりの会が保全している「日本たんぽぽ園」は、いまでは珍しいカントウタンポポの群生地だが、ここ数年開花が少なくなった。以前、元市民健康の森担当主幹の萩原哲さんから、土がやわらかくなりすぎないよう踏むこととのアドバイスをもらい、草刈りして「保護」するだけではダメと痛感した。
そのカントウタンポポが、市民健康の森の藤棚から遊歩道寄りの平地などにふえてきた。みどりの会会長の小座間清次郎当会会員が、カントウタンポポの増殖と調査を続けているが、昨年このエリアには 184 株咲き、今年は 2、3 割増とのこと。たんぽぽ園は昨年 170 株前後だったが、今年は 248 株。ふれあいの森の山道沿いにも群生が確認されている。多摩美の森一帯のシンボルになりそうである。
★たんぽぽの呼び名について
「たんぽぽ」の名称は、柳田国男説では、別名「鼓草」というように、花軸の両端を裂くとクルクルと丸まる形が鼓に似ていることから、鼓を打つ音「たんぽん」からきたという。
与謝野鉄幹説では、中国で「婆婆丁(ぼぼちん)」と呼び、これがいつか「ちんぽぽ」となり、「たんぽぽ」となったとか。
欧米では「ダンディライオン」と呼ぶことを教えてくれたのは、市民健康の森の基本構想検討委員会から推進委員会にかけて、市がコンサルを委嘱していた会社の若きナチュラリスト、Sさんだった。幼いころ父上から教えられ、小さなライオンがいっぱいいるんだと、春の野原を眺めてきたという。
小生、ダンディには「かわいい」の意味もあるからと一人納得していたら、あるとき朝のラジオで、ダンディはデンタル=歯のことで、葉のギザギザがライオンの歯だと教えられた。怖いイメージに一転したが、わがふるさと信州から、草木と人の豊かな交流を発信された宇都宮貞子氏によれば、「きりっこ」「くびきりぐさ」の名がある。
こちらも劣らず怖い名前だが、たんぽぽの花首は弱くもろい。子どものころ友だちと、花を爪先で弾き飛ばして飛距離を競ったものだが、そんな遊びからの命名のようだ。
「くじな」とも呼び、私は「くじる(掘りだす)菜」だろうと思う。まだ土が凍っているころ、地に這うロゼット状の株を根ごと掘ってきて食べる早春いちばんの青物だった。
草木の命名が、暮らしのなかでの活用や遊びからきているのが、なんとも日本的な主客不分離、里山的感性といえないだろうか。
ダンディライオンと呼ばれるセイヨウタンポポにも愛着が感じられるが、ここ多摩美ではカントウタンポポの群生を、だいじな仲間として見つめ、保全していきたい。