2003年9月20日「野外観察指導講座」講師 北澤 清先生に聞く
まとめ:編集委員 平成15年(2003)09月30日発行会報第02号から
麻生多摩美の森に来て「いいな」と感じるのは、まず人が集まれる広場があること。そして広場から、ふれあいの森など隣接地も含めた木々の眺めがいいことです。
そこには、ヤマザクラの立派な巨木があり、 都心から次第に後退して見られなくなったモミの巨木があることが貴重です。また、珍しい木としてアワブキがあり、視線を地面近くに転ずると、紫色の実をつけるサワフタギや、葉の真ん中に花を咲かせるハナイカダなどの低木が生えています。
最近の里山保全では、森を明るくするため、 シノダケなどと共にこうした低木や後継樹まで刈り払っているところも見られます。しかし、コナラ・ヤマザクラ・スギなどの高木から、亜高木―低木―草本―地被植物というように階層的に森を育てていくことが、豊かな森づくりといえるでしょう。
健康の森に記念植樹されている木には、キハダなど非常に大きくなって、すぐに空間を埋めるものがありますが、それぞれの木の占有面積がどれくらいかを考えることも大事です。それというのも、これからの森づくりでは、例えばケヤキの扇型の見事な樹形のように、木がのびのびと成長する自然で個性的な姿が見られるようにしたい。これが、20~30年で更新してきた昔の里山と違って、樹木を楽しむ現代の里山ではないかと考えます。
実のなる木、赤く紅葉する木、黄色く黄葉する木、発芽から展葉の過程が美しい木、などなど樹木の楽しみは季節を通じてたくさんありますが、それには木の種類を知ることが出発点になります。森のイベントは各地でいろいろありますが、コースを設けて木の名前テストなどはどうでしょうか? 広い森に木のネームプレートを1種類1箇所だけつけ、探しながら覚えるというのも、ひとつのアイディアです。
北澤 清氏
樹木研究家・元東京農業大学造園学 科助教授
川崎アカデミーみどり学講師・川崎 市公園緑地協会理事
樹木ウォッチングで平成14年度川崎市環境功労賞受賞