会報36-5 私の部屋 モロッコの迷宮をさ迷う③

中村 浩 [平成24年(2012)09月30日発行会報第36号から]

朝7時頃に宿を出て、マラケシュ空港から空路カサブランカへ、そこから電車を乗り継いでフェズ駅に 15 時頃に着いた。駅から、インターネットからプリントアウトした地図を見せてタクシーに乗った。運転手は解ったような、解らないような頼りない反応であった。ここだと降ろされたのは、高い塀と建物に囲まれた人気のない小さな広場。運転手が指差した門を潜った途端、いきなり名前を呼ばれてビックリした。声の主は宿の親仁で、そろそろ着くのではと思い待っていた、とのことであった。

宿では中庭にミントティーとモロッコのお菓子が用意されており、親仁の長話を聞かされるはめになった。親仁曰く、いいレストランを紹介するから、伝統的モロッコ料理を食べるべきだ、そして、いいガイドを紹介するからいっしょに観ろ、と。色々反論したが、結局は宿の親仁に従うことになった。

18 時頃迎えに来たレストラン店主の車に乗ること約 20 分。着いたのは団地の裏の空き地で、人気もまばらで寂しいところ。そこから両側に壁が迫る狭い路を歩くこと数分、レストランがあった。席は 40~50 人分あるが、今宵の客は我々2人だけ。料理は、モロッカンサラダ(野菜を香辛料で煮た物)、パスティラ(鳩肉を使ったミートパイ)、ラムのタジン、モロッコビール、モロッコワインをオーダーした。宿の親仁自慢の通り、どれも美味しかった。食後に店主が家中を見せてくれた。家は数百年前に建てもので、数年前にリフォームしたとのことで、豪華な装飾が壁・天井に施されていた。料金はモロッコの物価水準からすると高かったが、美味しい料理と家を見学できたこと、往復とも車での送迎を考えると良い経験ができた。

翌朝はフェズへ出かけた。ガイドといっしょなので迷うことなく観ることができた。ガイドの説明はとても解りやすく、パン焼屋(パン生地は各家庭で作り、窯で焼いてもらう)、昔の商隊宿など、自分では見過ごしてしまう様な所まで見ることができた。一歩脇道に入ったら地元の人の助けがない限り出るのは難しいことも実感できた。