[平成16年(2004)3月31日発行会報第4号から]
2 月7 日午後、麻生市民館で開催され、120 人の参加がありました。初めに植物誌調査会・吉田氏の講演、続いて各区からの活動報告がありました。懇親会は、阿部市長の挨拶でスタート、交流を深めました。各区健康の森と協賛団体の展示には工夫が凝らされ、会を盛り上げてくれました。今回は麻生多摩美の森の会が、各区健康の森および関係団体の多大な協力をいただいて、なんとか幹事役を果たすことができました。
<講演要旨>
雑木林と人とのかかわり 植物誌調査会運営委員 吉田多美枝氏(まとめ:編集室)
人家に近い雑木林は「里山」と呼ばれ、農家にとって必要な“人工林”でした。生活に密着した林で、その恵みを人々は利用してきました。クヌギやコナラは炭の材料として欠かせなかったし、山桜は咲いたときよい目印となるので植えていたようです。エゴの木は、唐傘の骨になり、シデ類は盆栽や炭の材料にもなりました。
森の恵みとは何でしょうか。森に入ると心が癒されます。緑色が“安心の色”であり、木が出しているフィットンチッドがあるからです。フィットンチッドは殺菌効果もあると言われ
ています。森は空気清浄機と同じで酸素を供給し、クーラーの役もします。地中から吸い上げられた水分が、葉で気化して温度を下げるのです。夏に目黒の自然教育園で測定したら、周囲と比べ 10度以上低く驚きました。また、園内に入ると森閑としており、これは森の防音効果によるものです。
里山の管理はどうしたらよいのでしょう。里山では、大きくなったクヌギやコナラなどは切っていました。そうすると、地表の日当たりがよくなり、株からの芽吹きも促進され 20~30 年でまた次の炭の材料となりました。一時的に殺風景になりますが、丈の低い植物がすぐに育ってきます。すべてを切ってしまうと、生き物の隠れ場所がなくなってしまうので、皆伐を順々に回していく方法がとられてきました。
木を切ってしまうことを疑問視する声がありますが、切らずにいると、孟宗竹やアズマネザサが繁茂し荒れてしまいます。竹は冬でも生長し、周りの木よりも大きくなり日陰を作るので、放置しておくと竹林ばかりになってしまうのです。また、クズも木の上部を覆い枯らしてしまうので、その退治も必要です。
春になると雑木林では、たくさんの草木が花をつけ、ギンランなども咲きます。これを持ち去る人がいますが、数年咲いても次第に咲かなくなります。ランに必要な共生菌が育たないためで、やはりその場所で楽しんでもらいたいものです。
健康の森の活動は、川崎に残された貴重な里山を、楽しみながら保全活動をして次世代に残そうとしており、すばらしいことです。自然観察会などどんどん行い、その輪を広げて欲しいものです。