小川誠治 (オーロラ天文台)[平成29年(2017)09月30日発行会報第51号]
≪夏冬に星空を楽しむつどいを開催して通算で20回≫
私は2001年、老朽化した多摩美の自宅改修を行った際に、直径3mの天文台を建設し、25cm反射赤道儀を設置しオーロラ 天文台と名付けました。この名前は私がオ ーロラ撮影のため20回以上もアラスカ等の極北を訪れていることから命名したものです。
渋谷駅前にあった、五島プラネタリウムでボランティア活動を行っていた私を含む仲間が、同年3月、同館の閉館に伴い結成したのが、渋谷星の会です。同プラネが渋谷にあったため、この会名になり、オーロラ天文台の活動は同会会員が中心に活動してます。
私は子供の頃から星が好きで、自宅に天文台を持つのが夢でした。ですから、設置目的の第1は云うまでもなく、自分の観測です。そして、第2の目的は天文ボランティアの育成です。
オーロラ天文台で始めたささやかな星を見る会は、開始当初は周辺の地域住民向けに行ってきましたが、天文台に入れる人数が7~8人と限られ、観測中に外でお待たせすることもあるため、野外観測会が出来ないか模索しました。
市民健康の森が近くにあることから、この場所をお借り出来ないか町会や地元団体に開催を打診しました。その結果、深いご理解とご協力をいただき、ここで2006年夏初めて観測会を行いました。
市民団体の皆様が準備のため、会場の草刈りを行って戴いている事や、若葉町会さん始め多摩美地区の全町内会さんが、広報活動にご尽力くださっていることも誠に有難いことです。特に開催前から今日に至るまで、献身的なご協力を戴きました、森の会の間野前会長、トラストの会の岡村代表に心から御礼申し上げます。
会場では「孫が月を見て、歓声を挙げてあんなに喜ぶ姿を初めて見た」とか「星を見たことで、家族で共通の話題が出来た」、「 月のクレーターや土星の輪って、本当にあるのですね」など大人も子供からも好評を得ました。
こうしたことから、以降夏冬20回実施しました。「星と緑のコラボレーション」でつなぐ、地域と家族の絆」、「星空のまちつくり」をテ ーマに、地元の皆様と手作りの共同事業を行っています。
とはいえ、オーロラ天文台の望遠鏡は、 重すぎて移動は出来ないので、観測会には会員が所有する望遠鏡を持参して戴いてます。会員は勤め人が多く、翌日の勤務に支障出ないよう土曜日に行うことが多いです。 今後も私達の「身の丈にあった活動」を心掛けていきます。
さて私の天文の恩師は二人います。お一人は、五島プラネタリウム星の委員で天、地元文台のドーム会社の社長をしておられた、故 小森幸正先生です。先生のご自宅がある大田区洗足池には星仲間とお邪魔して、 先生の望遠鏡で何回も観測会をしました。
もう一人が、五島プラネタリウムの名物解説員であった、故 水野良平先生です。かわさき宙(そら)と緑の科学館で「ゆうゆう散歩 」の解説を行っている、河原郁夫先生もお弟子さんなので、河原先生は年の離れた兄弟弟子にあたるといえます。その水野先生が横須賀市平作の自宅に 1964年建てた、平作天文台がオーロラ天文台のお手本です。夏に何回も宿泊でお世話になり、水野先生から直接ご指導を受けました。小森・水野両先生から学んだ恩返しのため星のボランティア活動を行っているわけです。
話は前後しますが、多摩美地区は緑を守る先進的な運動を行ってきました。以下、個人の見解になりますが、古くは、1970年代の多摩美地区を貫く道路建設、「菅~早野線反対運動」あたりまで遡ります。多摩美町会の太田会長、扶桑町会の佐野会長、手前味噌で恐縮ですが私 の父親である、若葉町会の小川会長らが結束して対応しました。
その後、80年代から90年代となり、緑の具体的な保全を模索する時期がありました。森の会会長である勝田さん宅にみんなが集まってどうしたら緑を守れるのか、口角泡飛ばして議論を行いました。
若葉町会では、市役所の政策担当者を呼んで勉強会をすることとなり、新井会長、柏倉副会長、岡村役員が突っ込んで意見交換を行いました。その時に講師に見えられたのが、峰岸是雄さんで後に麻生区長に就任されました。こうした多摩美地区の緑の活動を御覧になってこられた、峰岸元区長が川崎市の健康の森構想のヒントを得たものと確信しています。
今では当たり前となった、市民による 行政の緑の事業への参画協働を行うなどの発想のなかった時代から、この地区ではこうした先人たちの地道な運動が今日の活動の源流となっていることを紹介させていただきました。
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オーロラ天文台開設10周年記念式典について以下に述べさせていただきます。
2011年12月3日、多摩美町会館でオーロラ天文台10周年のつどいを、関係者を御招待して開催しました。
大先輩で川崎で星を見る会を1948年(昭和23年)から行っておられる、川崎天文同会の箕輪敏行先生から「この10 年間、地元の皆様と協力した活動は目を見張るものがあり、私たちも参考にした い」旨の祝辞を頂戴しました。
また、当時の板橋洋一宮前副区長も列席され「健康の森での星と緑のコラボ の10年間の活動は素晴らしい」旨のお褒めの言葉を頂戴しました。
友人を代表して、峰岸是雄元麻生区長 が乾杯の発声をされ、「皆様、小川さんの 個人的な趣味に10年も付き合って下さって有難うございます」との言葉には、場内大爆笑となりました。
第2部では、小川の古い友人で、読売ランド駅前にある音楽院講師も務める、 Kana(高橋佳奈子)さんのフルート演奏と、10年前の開所式にも見えられた、三遊亭金時師匠による爆笑落語で会場を沸せました。
今後も星と緑がタッグを組んで、大都会川崎に残る貴重な緑と星を後世に残せる活動を行いたいと思います。