会報22-1 多彩! 里山の「小さな木」の楽しみ

木村信夫  [平成20年(2008)09月30日発行会報第22号から]

初夏の観察会は雨天延期で 6 月 28 日に実 施され、自然観察指導員、高橋英さんのガイ ドで麻生多摩美の森周辺を、自然遊歩道から ふれあいの森の山道へと歩きました。そのなかで、ここの森には、よく目立つ高木のほか、 ふだん見過ごしている「小さな木」の中木・ 低木・林床草本が、実に豊富に育っていることに、改めて気づかされました。

斜面一箇所に 30 種もの高・中・低木

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遊歩道との境界斜面
(栗の木の東)

そこで7月11日に再度高橋さんの指導で、 中木・低木を中心に簡易調査をしました。右の写真は栗の東側、遊歩道との境界斜面です。 ここには、高木はコナラ・クヌギ・スギがあ り、その下に中木のアカメガワとヌルデが 元気に伸び、さらには、ニワトコ・シラカシ・ アラカシ、若いコナラ・エゴノキ・エノキが競うように枝を広げています。その下方には、 カマツカ・ゴンズイ・ムラサキシキブ・キブ シ・ヤマグワ・サンショウ・タラノキ・ガマ ズミ・ツルウメモドキ・アオキなど、さらに は地面近くに低木のコゴメウツギ・モミジイ チゴ・ニガイチゴ・サルトリイバラなどが息づき、細かく調べると幅20mほどに30種以上はありそうです。

img861アカメガシワやヌ ルデは草原が森に変 るさいに、まず成長する「森づくりのパ イオニア植物」です。 やがて林が育ち、林内や縁にはやや日陰でも育つムラサキシキブやゴンズイなどが生え、美しい実で野鳥を呼び寄せます。 こんな風にして、植物・動物相が豊かになっていくのが雑木 林のしくみです。

そして、枝が強い カマツカは鎌の柄や、 別名ウシコロシと呼 ぶように牛の鼻輪 (鼻輪を通す穴あ け)に使われ、ニワ トコは赤い実が果実 酒、幹の髄が顕微鏡観察の切片作成用の ピスに、ヤマコウバシの葉は飢饉のときの食 用など、多彩な植物は人びとの暮らしに多彩 な恩恵をもたらしてきました。そんな里山の木々の豊かさを見つめ、大事にしていきたいと思います。

写真:上からアカメガシワ・カマツカ・ムラサキシキブ・コゴメウツギ