自然観察指導員 高橋 英 [平成19年(2007)09月30日発行会報第18号から]
“赤い鳥小鳥なぜなぜ赤い赤い実を食べ た” いま、お山の木々は赤い実、青い実、白い実などなどで着飾って、素敵なファッシ ョンショー。ではない! 命の受け渡しを賭 けた一大イベントで、長い時間を積み重ね、 工夫をこらしたたくさんの命が集積した姿なのだ。
●コブシの実と種子 命の受け渡しの知恵
そんな姿を、市民健康の森のコブシに見てみよう。拳に似たコブシの果袋が緑色から黄赤色に染めて、口をあけて橙赤色の実を覗か せている。「赤」は鳥を呼ぶ色、鳥に運ばれ散布される果実に赤色が多いのは、古くから 知られていた。が、生物のうち霊長類と鳥類 だけがもつ色覚を、植物がどうして知ったのだろうか、不思議! 不思議!
コブシはさらに、橙赤色の果実を白い糸で下にぶら下げ、風に揺て目立たせることま でしているのだ。赤い果皮と、そのなかの少々の果肉は鳥の栄養分にされ、黒い種子の皮が鳥の消化器、砂嚢(筋胃)の砂によって 傷つけられ(これにより発芽率が上がるとい う)、体温であたためられ(こちらも発芽率 アップ)、お空へポィと放出され、種子は糞 とともに新地へ降り立つのだ。コブシだけで なく、貴男の命も、たくさんの命を引き継い で、その進化の上に成り立っている。
●よく見てね!二色効果の誘惑
マユミ、ガマズミ、カマツカ、アオキ、ハ ナミズキ、アワブキ、ニワトコの果実は赤系。 ヤマザクラ、クマノミズキ、ミズキの果実は 未熟なときは赤、熟すと黒く変化し、両者が 混じって鳥にアピール。これを、二色効果だ という。そのうえ、ミズキ、クマノミズキは 果実を支える果柄まで赤く色づけして目立 とうとする。拍手!拍手!
最後に、ゴンズイは赤い果実の中に黒い種子、クサギは青藍色の果実を真紅で星形のガ クがきわ立たせる。アッパレ!
私も顔に白粉、赤い口紅さして自然観察会に行ったり銀座を散歩したり。こちらの二色効果はまったく効果ないのはなぜだろう。
(編集長釈明 多摩美の森の鳥たちは皆引っ 込み思案でして、スミマセン。なお、10月27日(土)10 時から 多摩美の森秋の観察会を開 催、講師は高橋英さんです。乞ご期待)